店長日記
白鶴上撰1800ml ほらくり11年常温古酒&17BY紀美野純米酒
まずは、熟成について
日本酒にも、大きく分けて「未熟域」「適熟域」「過熟域」という熟成を表す言葉があります。
すべてのお酒、搾られたその時から「劣化」は始まります。
けれど、その見えない裏側で「熟成」というものも始まっています。
それぞれのお酒に、半年・1年・2年・・・そんな時間という物差しでは測れない、それぞれのお酒熟成特徴があります。
また、熟成は環境によっても大きく左右されます。
低温で置いた場合。常温で置いた場合。それぞれに「熟成感」が違います。
劣化>熟成・・・劣化が熟成感を上回れば、違和感のある味覚になるでしょうし、劣化<熟成・・・熟成感が劣化を上回れば、価値ある味覚と感じられるわけです。ただ、どちらにしても良さは存在します。
いつも皆さんにお伝えしているように、「荒探しではなく」「良いところ探し」でお酒を味わって頂ければ、また、その良さが顕著に現れる飲み方を工夫すれば、きっと、そのお酒の価値は断然に理解できるはずだと思います。
そんなわけで、
昨日、当店のお客様達が主催して恒例でやっている「日本酒を楽しむ会」に、とても、ワクワクさせる一酒を持って出席させて頂きました。
それは、灘清酒・白鶴上撰1.8L・・製造年月日は1997.4.もの・・それも常温保存されたものです。
ギフトとしてもらったものを、普段、飲まないからとお風呂場の隅に置いていて、てっきり忘れていたものです。
実際に、管理などは一切していません。けれど、
光は一切当たっていません(箱入りでしたので)温度は、夏場で25度前後、冬なら0度から10度前後という場所です。
ハッキリいって「飲めるものではない」という憶測で楽しむ会に持参いたしました。
ただ、お酒も10年あまりたつとこんな味わいになるということを知って頂こうということでも、面白半分で持参したのが本音でした。
さぁ、いよいよ11年ものの白鶴上撰1.8Lの開栓。
まずは、香りから ん・・・・・「なになになに・・・まさしく紹興酒のような甘さを感じさせる熟成感のある香り」・・・「まさか・まさか・・・グラスに注ぐと何と琥珀色に熟成したお酒でした。」・・・ここまでは、上出来。
けれど、疑いはいっぱい残っている中で恐る恐る一口。
「なんなんだ!これは・・・」「嘘やろぅ・・・」「ちゃんと熟成し、古酒として十二分に通用するレベルの味わいじゃないか」
驚く私の顔を見て、みんなは「おいおい・・・俺にも飲ませろよ」
確かに、すべての参加の方が「すごい!」と感動したものではありませんでした。
そこには、正直言って「各々の味覚の幅が存在しているからです。」
白鶴上撰常温11年ものに感動した人は「押入れに5年物の白鶴や白鹿あるから、あと10年寝かせてみよう。」なんていう言葉さえ飛び交っていました。
そして、一応、調理人のはしくれの私がもうひとつ気づいたのが、これでタレを作ったら・・・これで魚でも煮付けたら、きっと美味しい味覚になるだろうなぁということです。ですので皆さん、飲まないお酒がある時は、こんな方法もあるんだと覚えておいてください。
そして、参考までにその日の会の最初のお酒は、臥龍梅純米大吟醸生貯蔵原酒上槽後8か月というものでした。
日本酒に慣れ親しんでいない人も、長年、色々なお酒を飲んできた方も、確かにみんな「美味しい酒だね」という言葉は発していました。
日本酒に慣れ親しんでいない女性の方などは「ワインみたい」と感動してましたね。
そして、後日、残った白鶴上撰常温11年ものを色々な方に飲んで頂きました。
感想は人それぞれ・・・そして、とある有名酒蔵の方にも飲んで頂きました。
「白鶴上撰常温10年ものなんですけど飲んでみて下さい。」
実は驚くことは予測範囲の中で、どんなリアクションをするか楽しみに、その方を見ていました。
「本当に白鶴ですか?????」「何かほかのお酒、入れているんと違いますか・・・」だって。(封切りだという大勢の証人はいますから)
酒蔵の方曰く「うちの古酒より、いい出来だよ。」そうなんです。本当に白鶴上撰常温11年ものとは思えないレベルの高さなんです。
そして、どうしても飲ませてあげたい方がいます。
和歌山のとある人気酒の蔵元の杜氏さんです。その方もきっと驚かれるはずです。
もしかしたら、その杜氏さんが、この蔵にいた時に、このお酒に自身に携わっていたかもしれないからです。
というわけで前置きが、無茶苦茶長くなってしまいましたが、
これから、ご案内する「紀美野純米酒」は、17BYといって、今から2年前の冬に仕込まれ搾られたお酒です。
前々から、このお酒を最初飲んだ時からこの酒質なら「適塾域は今じゃない・・・もっと、熟成されるはず」だと感じていました。
その頃には、18BYも市場に出回り出していました。
けれど、私はあえて17BYを注文しました。
その理由は、まずコストパフォーマンスです。
これだけの酒質で、2000円をきる1995円という価格です。(現紀美野純米酒は2310円)
昨年の時点でも、1000円台だとは思えない酒質をもっと化かしてみたい。その可能性は十二分と考え、皆さんが驚くお酒としてお届けしたいと思ったのが、17BY紀美野純米酒です。
そして、もうひとつ。
18BY紀美野純米酒が発売されていながら、17BY紀美野純米酒を選びました。
なぜ?17BY紀美野純米酒なのか・・・・そこには「個性を大切にしたい」と感じたからです。
18BY紀美野純米酒飲みました。確かに17に比べて酒質は向上していました。いいお酒になっていました。
これで2310円は確かにお買い得なお酒です。
「紀美野」のコンセプトは「和歌山に根ざした酒づくり」であり、原材料も和歌山の米・水・酵母も和歌山。純粋な和歌山の地酒を目指す。
そんなコンセプトの中で18BYは進化して確かに多くの人から認められるお酒となったでしょう。
けれど私としてみれば、17BYの方が和歌山らしい味覚であり個性を生かしながらも和歌山らしさを感じてしまったのです。
ある限りは17BYの酒質を大切にしたい・そして、当店においてさらに進化させていきたいと思って、ようやく皆さんにご案内できるところまでたどり着いたということで今回改めてご案内いたします。
冷もいいですが、是非、常温・ぬる燗・燗でお飲み下さい。
温めるとやさしく包み込んでくれるうま味に出会えます。
その時に2000円を切るお酒だともう一度、思い出して下さい。このお酒のすごさがもう一度、感じて頂けるはずです。