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酒づくりは金太郎飴ではない。
酒づくりは金太郎飴ではない。
● 酒づくりは金太郎飴ではない。
日本酒づくりは、自然や微生物と向き合うデリケートな仕事です。毎年同じお米を使い、同じ工程を踏んでも、環境の違いやほんのわずかな温度・吸水率の差、もろもろで味わいが変わることがあります。つまり、日本酒は「いつも同じ」ではなく「その年その瞬間の表情」を映す生き物のような飲み物なのです。
● 「新たな挑戦か!」と感じる声がある一方で「不快な味だ!」と感じた方も。
酒千蔵野の代表する人気酒「幻舞シリーズ」。2025年7月に山恵錦という長野酒造好適米をつかった純米吟醸が発売されました。はじめてのお酒だったので取り急ぎ試飲を…。私自身もこれまでとまったく異なる味わい、路線であることに「驚き」を隠せませんでした。「新たな挑戦をされたんだ!」と納得し、みなさんにご案内するにあたり早々に簡単ながらも食とのペアリングを。すでにこのタイプのお酒ならということで料理を10点ほどに絞り込み、実際に「共鳴」と「同調」のよい料理を取り急ぎのご案内の為に探してみました。その結果、ライトなブルーチーズ系とシャインマスカットの果実がお酒となじみましたね。(実際には他にも色々なペアリングが存在しているので、あとは飲み手のみなさんでお探ししていただくことに。)
ある日、お買い上げいただいた飲み手の方から「不快な味だ!」「これまでの幻舞ではない!」「ひと口飲んで残り全部捨てました」とご連絡をいただきました。そしてご不満のある飲み手の方には蔵元として「返金処理」をするというアナウンスが出ているということでした。
● 後日その件について蔵元(杜氏)に真相をお聞きすることに。
実はその裏には、製造機器の不具合と、杜氏さんの病気による味覚の障害(副作用)という、誰にも予想できない出来事があったようです。しかしぶれていたとしても出荷前には、複数人数で「確認」と出荷されるかどうかの判断がされていたのではないでしょうか。あとのお話になってしまいますが、蔵元も今回の諸事情を踏まえたうえで「こんな味わいのお酒になってしまいました。」「つきましては、飲み手のみなさんに××のようなこれまでにない味わいとなりましたが、是非イレギュラーなお酒としてご理解いただける飲み手の方のみお買い求めいただけるようご案内ください。」と事前にアナウンスがあればよかったのかもしれませんね。
● 「いつもと違う」からこそ、生まれた気づきと意味
人気銘柄、人気蔵元だからこそ飲み手に限らず、販売店からも多くの声をいただきましたとのこと。このお酒が生まれた経緯は理解しつつも結果として「これはこれで美味しいお酒!」「ある意味、もう二度と口にできない幻舞だよね!」というお声も多くいただいたとのことでした。(杜氏ご自身も深く反省の中で、いまさらなのですがもう二度と口にできない一期一会の幻舞として愉しんでいただければ幸いです。と)
● 「同じように造っても、同じにはならない」それも日本酒の奥深さであり、面白さ。
熊野にはこんないい伝えがあります。「ネガティブなことも、まずは感謝の視点から噛み砕いてみてはいかがかなぁ。」せっかくの機会なので、思い通りにいかなかったお酒だったかもしれません。そのお酒だからこそ語れる物語も浮き彫りになる真実も存在しています。お酒は、背景を知りその年の味わいの違いを受け止め、飲み手が「寄り添って味わう」ことで、最後は飲み手が完成させていく日本らしさが詰まった飲み物なのかもしれませんね。
● 最後に
たしかにある意味物議を呼んだ幻舞山恵錦純米吟醸についても、飲み手それぞれのお酒と向き合う「視点」とこれまでの経験や学びから得られた「モノサシ」と「感性」の違いで感じ方や映りかたが違って見えるということを改めて考えてみる機会につながりました。
・捨てる前に、料理に使う前に、お風呂に入れる前に…ご相談ください。とお伝えいたします。
今回「ひと口飲んで残り全部捨てました」という事案が起こりました。私だけでもなく、造り手も、農家さんにとっても、その事案は「とても悲しいデキゴト」だったはずです。そんなときは、是非、当店にまずはご相談ください。これまで多くの「棘のある」「歪んだ」「おかしな個性」を有するお酒と出会い、その個性をいかして「驚きを伴う美味しい!!に変換してきました。」当店でお買い上げいただいていないお酒でも、また開栓して長期にわたり保管し「棘のある」「歪んだ」「おかしな味わい」になってしまったお酒でも必ずや「これはこれであり!」あなたの「美味しい」という声と共に天寿させてあげられるアプローチをお伝えいたします。
- 2025.10.18
- 05:44
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