1. 酒づくりは決して金太郎飴ではない
お酒だけに限らず、何かを生み出すお仕事をされている方ならご理解いただけることだとは思いますが、毎回同じ製品を生み出そうとしても、ときには何らかの原因でいつもと違ったり、同じようにしたつもりでも、ずれてしまったりすることって多々ありますよね。そんなエラーを積み重ねることで、技術も製品の完成度は高まってもいきますね。
実際、お酒造りにもよく似たことが多々起こっています。とくに日本酒造りは本当にとてもデリケートなのです。 いくつもの製造工程を経てお酒として生まれてきます。相手が目に見えない微生物と自然環境だから余計に厄介なのです。
ちょっとお米の下処理において水の吸水率をちょっとだけ間違えるとか、発酵させる温度が毎年、毎回つくっているお酒であったとしても年によっても違ったりしますし、近年では自然環境が大きく変動しお米の作柄も大きくぶれたりするのは、ごく当たり前のこと、、、、本当に日本酒造りってデリケート。日本酒はもともと金太郎飴とはいかない飲み物なのです。
〇物議をかもしたお酒
とある人気酒がこれまでとは全く違う路線の味わいをもつお酒として発売されました。実際私も試飲して“えっ!”っていうよりも“おっ!”という驚きの声でお酒を口にしました。「今、流行りつつあるフルーツ感のあるタイプに挑戦したんだ!」とある意味「やるじゃん!」と勝手に想いを一人歩きさせ驚いていました。
しかしある飲み手の方から、お問合せというよりクレームに傾くといえるご連絡をいただきました。「とても不愉快な香りと味わいだ!」「残りを飲まずに捨ててしまった!」とのことです。その一文を読んだとき“えっ!”って驚きを隠せず、さらに「残りを飲まずにててしまった」ことは酒屋としてまの生業の中で記憶に残るデキゴトでした。
このご連絡をいただく前に、すでにこのお酒を「まずはどのように愉しんでいただけるか」を試飲→各ペアリングをし簡単ではありますが落としどころを探っていたので、飲み手の方からご連絡には、一瞬驚きましたが、いかに届いたそれぞれのお酒の個性味に寄りそっていただくことを日々、販売者として伝えていたつもりでしたが「出会った味わいに寄り添って楽しんでほしい!」が伝わっていないという現実、しっくりこなかったとしても、その「出会いから飲み手が何を施してあげ、自らの美味しいに手繰り寄せて愉しんでほしいという願い」と具体的に落とし込んだパンフレットの同送、、、地酒みゆきやとしての志事として、まだまだ伝えていかないといけないんだぁと痛感いたしました。
〇このお酒に寄せられたポジティブな声と不快感だという声
そして自らの世界の中で、ものごとを一人歩きさせてもダメなので、そのお酒を造られた最高責任者である杜氏さんに今回いただいた飲み手の声の報告と自らの感想、想いを伝えさせていただき、真相をお伺いすることに、、、、。
〇このお酒が生まれた背景
1、 製造過程における機器の不都合が生じてしまっていたこと。
2、 最高責任者である杜氏さんが長期入院され治療の後遺症で味覚障害が起こってしまっていたこと。
それらの2つの大きなアクシデントともいえる要因が引き金となり今回のデキゴトが生まれた真相を知ることができました。
〇今回、このように物議が生まれるお酒をお届けしたことにお詫びをされました。
機器の不都合、杜氏さんの長期入院の原因の中でも、このように物議を生み出してしまったことは関係者のみなさんに申し訳ないと謝罪されていました。
またお酒を造られた杜氏さんとの会話の中で、今回のお酒について大きく分けて2つのお声をいただいたとのことです。
飲み手に不快感を残さない対応
酒米は違えどもこれまでの流れとは違うお酒のタイプだから飲み手からのクレームが入った場合は、蔵元として飲み手に不満の声を残さない形の対応をしてほしいという特約店の声。
二度と出会えない希少な味わいとして提案
一方で 、今回のお酒が生まれた背景、諸事情はよく理解できた。そして「ある意味、これはこれで、これまでにないタイプのお酒であり、しっかりと出会う味に向き合ってあげれば、ステキなお酒だし、もう二度と出会えない希少なお酒ともいえる。だから農家さんや蔵元にとっても、飲み手のみなさんにとっても、共に幸せになるご提案を施してバトンをつなぐことにします。」という特約店の声。
今回の生まれたデキゴトに対して、「どう向き合うか」、「どう向き合ったか」で、デキゴトの見え方、映り方が違い、そこから生まれる、それぞれの特約店の声にも大きな隔たりが生まれましたとのこと。
そんなとき想い出した名言と重なり合いました。
「母親のおなかの中で10月10日育った赤ちゃんが、何らかの事情で死産になってしまったデキゴト」
そこで発せられたドクターの言葉を今回のデキゴトに言い換えるなら「このお酒が世に出たことにも、りっぱな意味が存在している!」
そして熊野には、 「ネガティブなことも、まずは感謝という視点から嚙み砕いて今一度少しでもポジティブにとらえられないかを考えてみてはどうだろうか」といういい伝えが残されています。
どのお酒たちも、しゃべることができないんです。だから代わりに声を伝えてあげてるのも酒屋としての志事のひとつなんです。お酒に隔たりなんて必要ないのです。つけちゃいけないんです。
ひとりでも多くの飲み手の方々が、それぞれのお酒たちのいいところをみつけてあげられる飲み手に今日から変わっていただけることを願うところであり、そのお手伝いをさせていただける酒屋でありたいです。
飲み手も造り手も幸せになってほしい。ご縁のある飲み手のみなさんの為に、今よりステキなアルコールライフにつながる1歩、アップデートにつながることをこれからも伝えてまいりたいと思います。
最後にひとこと
蔵元も今回の諸事情を踏まえたうえで「こんな味わいのお酒になってしまいました。」「つきましては、飲み手のみなさんに××のようなこれまでにない味わいとなりましたが、是非イレギュラーなお酒としてご理解いただける飲み手の方のみお買い求めいただけるようご案内ください。」と事前に伝えておけばベストだったのかもしれませんね。
しかし多くのご意見が生まれたことで、特約店それぞれ、飲み手それぞれの想いや背景が浮き彫りになったことで、特約店それぞれ、飲み手それぞれにも今一度、考えていただける機会ではなかったでしょうか。
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